インタビュー

2021/09/01

地域との共創で、「ゼロ・ウェイスト」の仕組みをデザインする。【ゼロ・ウェイスト・ジャパン 坂野 晶 代表理事】

ごみを減らし、資源として循環させる「ゼロ・ウェイスト」の取り組みで世界から注目を集める、徳島県上勝町。人口1,500人に満たない山間の町を拠点に活動しながら、2019年に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では共同議長を務めたことを機に、その活動に一層の注目を集めているのが一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事、坂野晶さんです。

現在、様々な人々や地域とつながり、意欲的に活動する坂野さんは、近年、小田急および沿線地域との連携も深めています。今回のWOOMSインタビューでは、多くの共感と成果を生み出す独自の取り組みと未来に向けた想いについてお話を伺いました。

坂野 晶(さかの・あきら)
兵庫県西宮市生まれ。関西学院大卒。海外インターンシップ事業を展開する国際的な学生NPOアイセックのモンゴル代表などを経て、2015年に特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー理事長に就任。2012年世界経済フォーラムのGlobal Shapers に選出され、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では共同議長を務めた。現在は、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事として活動する。

地域単位で“ごみ”の問題に取り組む意義。

どのようなきっかけで「ゼロ・ウェイスト」の取り組みに関わるようになりましたか。

もともと鳥が好きで、絶滅危惧種の保護にすごく関心がありました。でも、自然は人間の社会制度に大きく左右されるもの。そこで保護活動だけはなく、根本から解決する仕組みづくりをするために環境政策を学びました。

とはいえ、政策を学んでも、実践する現場はなかなかありませんでした。2003年に「ゼロ・ウェイスト」を自治体として日本で初めて宣言をした徳島県上勝町のNPOに、大学時代の友人の縁で加わったのは、そんなジレンマを抱いていたタイミングでした。そもそも環境政策の仕組みが成り立つのか。どうすれば住民の方々が参加できるか。そこでどんな効果が上げられるのか。トライアンドエラーを経験するには、まさに絶好の機会でした。

上勝町における取り組みを通じて、坂野さんが得られたこと、感じたことはありますか。

そうですね、現在の活動につながる2つの気づきを得たと感じています。ひとつは、誰もが自分ごとにしやすい“ごみ”というテーマの面白さです。多くの環境問題は身近に感じるには切り口が大きすぎて、実感に結びつきづらいものです。例えば、最近でこそ異常気象による実感が追い付いてきましたが、当時は多くの人が気候変動で気温が上がっていますと言われても、ピンときませんでした。それに対して“ごみ”は日々暮らしているかぎり、みんなにとって身近な存在で、実感に結びつけやすいテーマだと言えます。

もうひとつは、地域といった単位で活動する視点ですね。小さな範囲で、小さく始めることで、いろいろ試しやすく、効果も目に見えやすい。ひとつひとつの規模は大きくなくても活動の現場を増やしていけば、どこかのタイミングでオセロみたいにガラッと世界が変わるはずです。地域単位で“ごみ”の問題に取り組む先に、そんな未来が広がっていると私は考えています。

みんなの行動を変える仕組みのデザイン。

なんと上勝町は80%以上のリサイクル率を誇っていて、日本の平均の4倍にもなる高水準だそうですね。そこには、どのような秘密があるのでしょうか。

上勝町は20年以上も分別の取り組みを積み重ねていて、私が携わったのは細かな整理や分別項目のアップデート程度です。その上で、そもそもこんなにも細かく分別をする目的に立ち返ると、実はリサイクル業者の方々に協力してもらいやすくすることから始まっています。

“ごみ”の処分にかかるお金を減らすために「ゼロ・ウェイスト」に取り組んでいるのに、リサイクルのコストがかさんでしまっては本末転倒ですよね。だからこそ、業者さんが引き取ってすぐ資源にできる状態で渡すのが大前提なんです。わざわざ比較的遠い立地の町に収集に来てもらい、収集量も年間で他の自治体と比べて品目ごとで見ると少ない・・となれば普通、金額は上がりますからね。例えば、紙類はすべて紙ひもで縛り、紙の硬さなどでも分け、紙類だけで9種類に分別しています。業者さんは上勝町へのエールを込めて収集に協力してくれている方たち。その想いに感謝して手間をかけさせない努力をしています。

上勝町では多くの住民が取り組みに参加している点でも注目を集めています。皆さんの意識の高さは、どこからやってくるのでしょう。

よくある質問、ナンバーワンですね(笑)高い環境意識で積極的に取り組んでいる方ももちろんいますが、住民の全員が全員意識が高いわけでは決してありません。住民の行動を変えるためには共感が必要で、共感のポイントは地域それぞれで異なります。その時、マーケティングと同じような視点を取り入れ、行動を変える仕組みをデザインすることがとても重要になります。

上勝町の場合は、まず「納得」を得るために「なぜこれをするのか」「なぜ細かく分別するのか」を丁寧に説明しています。アルミ缶なら1キロあたり何円になります、とか、燃やすごみならどこで燃やされ、1キロあたりいくらかかるかまで分別の標識に書いてあります。納得できる情報と透明性があって、その上で共感につながる余地が生まれます。中には文句を言いながらの人もいると思いますが、情報としては納得いただいているからこそ、昔なら野焼きしていた“ごみ”をステーションに持ってきてくれるだけでまずは万々歳なわけです(笑)

楽しく学んで実践したくなる「ごみゼロゲーム」

行動を変える仕組みのデザインという点で、坂野さん考案の「ごみゼロゲーム」が大きな成果を上げているそうですね。

「ごみゼロゲーム」は、子どもたちに楽しみながら“ごみ”の削減を学んで実践してもらうために、ゲーミフィケーションのメソッドを生かして開発しました。一般に小学4年生くらいになると3Rの言葉を習い、クリーンセンターや焼却場を見学しますが、テーマはリサイクルにとどまっていることがほとんどで、そもそも“ごみ”を出さない方法を考える機会にはなっていません。

「ごみゼロゲーム」は、日々自分たちがものを使うときやお買い物をするときに、どう考えれば「ゼロ・ウェイスト」につながるのか学べて、実践できるようになってもらうためにデザインしています。修理して使ったり、リユースする、さらに「そもそもこのものを使わない選択はないのか」を提案するとポイントが高くなる設計になっていて、“ごみ”に共感して「助けよう!」というマインドにさせるところが特徴です。

実際に学校の教育現場で「ごみゼロゲーム」を活用している自治体で、ゲームの効果は家庭にまで及んでいるそうですね。

ゲームをした子どもたちに「家のごみ箱を開けてリサイクル、リユースなどできそうなものを10個見つけてください」という宿題を投げかけてみるんです。普通、子どもが家庭のごみ箱を漁っていたら大人は注意しますよね(笑)でも、宿題なら親子で“ごみ” をテーマにコミュニケーションするきっかけになります。

「ごみゼロゲーム」を通じて子どもたちのマインドが変わり、子どもたちが起点となって家庭でのアクションが変わっていくこの仕組みを、今後、地域学習や調べ学習のようなプログラムとして広げていければと思っています。

認証制度で “ごみ”の出ない買い物を広げる。

お店で“ごみ”を減らすことを目的に立ち上げたという「ゼロ・ウェイスト認証制度」について教えていただけますか。

上勝町では80%のリサイクル率を実現していますが、言い方を変えるとまだ20%残っているわけです。でも20%の内訳は、リサイクルが難しい素材や製品、あるいは衛生用品などで、これはもう住民の努力だけでは削減が難しいんですね。さらに、リサイクル率は上がっても、ごみの「排出量」は変わりません。つまり、出口は変わっても入り口は変わっていない。そこには、「“ごみ”が出る方法でしか買えないじゃないか」という課題があるわけです。そこで、購入先であるお店や地域内の事業所に光を当てたのが「ゼロ・ウェイスト認証制度」なんです。

認証制度の推進にあたっては「ゼロ・ウェイスト」に取り組むこと自体が、お店のメリットになるように意識されているそうですね。

例えば、食品の量り売りはパッケージの“ごみ”を出さない手段として有効ですが、人口もお店の数も少ない上勝町では、飲食店が普段仕入れている食材を量り売ってもらうという独自のスタイルを採り入れてもらい、協力してくれるお店に認証付与させていただきました。そうすることで、在庫がお店側の負担になることもない一方、お客様に原材料に対するお店のこだわりなどを知ってもらえるチャンスになります。リスクを極力減らし、メリットが得られる掛け算のような仕組みを目指したのです。

さらに、「ゼロ・ウェイスト」をがんばっているお店の後押しとなるように認証マークを作り、店頭で発信できるようにしました。「このマークはなんだろう?」「どんな取り組みをしているのだろう?」とお客様の関心が、お店への共感につながってくれればうれしいですね。飲食店向けから始まった認証制度は、現在はアパレル向け、コワーキングスペースやシェアオフィス向けへと着実に広がっているところです。

経験と連携で「ゼロ・ウェイスト」を加速させたい。

現在、坂野さんは地域の枠を超えた「ゼロ・ウェイスト」に取り組まれていますが、課題意識と今後の展望について教えていただけますか。

一言で地域といっても、ステークホルダーも違えば、解決すべき課題も違います。地域は生き物なんですね。取り組み当初の情報収集は本当に時間がかかりますし、それだけにひとつひとつ紐解いて理解していくのにはものすごくエネルギーが必要です。結果、すべての活動は地域に応じてカスタマイズしていくことになりますが、そのプロセスをいかに短縮するかが、非常に重要なテーマとなっています。

しかし、カスタマイズしたケースの増加は、そのまま私たちの引き出しの増加につながりますし、情報収集で言えば外部から関わる私たちに対して行政の方々がより内発的に行動できる仕組みをデザインすることでスピードアップが図れます。将来的には、現在と比べて3分の1のプロセスや時間まで短縮したいです。

同時に、私たちが個々にできることには限界があるため、想いを同じくする方々と積極的に連携し、役割分担していくことも必要だと考えています。データ収集や分析でプロセスを可視化してくれるWOOMSは、課題の把握や仕組みのデザインを効率化する上で大きな鍵になるサービスだと思いますので、その意味ですごく期待しています。地域単位での取り組みを加速させて、オセロがひっくり返るようにガラッと世界が変わるその時を、一緒に目指していきましょう。

interviewer=正木 弾・米山 麗・田村 高志

editor=瀬戸 忠保

photographer=瀧田 翔

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